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全部嘘です(嘘)


by kemicho
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貴婦人の涙

お昼の話。

先日購入したお財布を持って、お弁当を買いにエレベータに乗り込むと、そこには同期の人がいました。
そして彼女は言いました。
「あれ、その財布ポールス?」
ポールス?初めて聞く単語です。
私は言いました。
「そうそう。ポールスポールス。」
大衆に迎合するのは私の得意技です。
「だよねー。その柄だもん。」
「ねー。この柄って言ったらポールスだよねー。」

ええまあ、ポールス=ポールスミス、ってことはなんとなく分かるんですよ。

でもね。
「ポール・スミス」じゃないですか。
ポールスって聞くと
「ポールス・ミス」みたいじゃないですか。
ポールスさんが何をミスったって言うんですか!(違います)
もしくは「ミス・ポールス」さんが作ったブランドですよ!(それも違います)

ミス・ポールス・・・なんとなく貴婦人の薫りがします。
きっと30代くらいの素敵な女性ですよ。
優雅な物腰でポールスミスの社長を務めてるんです。
夫には若くして先立たれ、以後、後をついで一人で会社を切り盛りしてるんです。
いつまでも夫のことを想い、いくつもの縁談を断ったりしています。

で、ここに一人の若者がいます。
仮に名前をトニーとしておきましょう。トナカイポールスミスの社員です。
前社長で、ミス・ポールスの亡くなったご主人は、彼をとてもかわいがっていました。。
彼も、そんな社長を慕い、尊敬していました。





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ある年の、前社長の命日。
彼は、今まで墓参りをすることができなかった。
それどころか、葬式にも参加しなかった。
前社長が死んだことを、どうしても認めたくなかった。認められなかった。
だが、もう5年も前のことだ。
もういいかげん認めなければ。
墓参りくらい・・・・・・そう思い、彼は前社長が埋葬されている墓地に向かった。


前社長の墓の前には、先客がいた。
喪服に身を包んだ、ミス・ポールスだった。
「こんにちは。ミス・ポー・・・」
声をかけようとして、あわてて足を止めた。



泣いていた。



夫の墓の前で、涙を流す彼女。


美しかった。
息を呑むほどに。

彼は一発で恋に落ちた。
前社長の墓前で不謹慎な、と頭では思うのだが、そのときの彼女の魅力に抗うことはできなかった。


その日から、寝ても覚めても彼女のことばかり思い続けた。
あの日、結局声をかけることはできなかった。
涙の理由も聞くことができなかった。
・・・いや。
あの日、あの場所で彼女が流す涙だ。理由なんて決まっている。
そう。5年経った今でも、彼女は・・・。

でも、あきらめることはできなかった。
いくら忘れようとしても、あの日の彼女が頭にうかんできて、仕事も手に付かなかった。


そうして悶々と過ごす日々が何日か続いた。
彼女に対する想いと、前社長への申し訳ない想いで、押しつぶされるような日々。



彼は、決心した。

こんな悩み続ける日々を送るなら、いっそのこと全て告白して潔く終わろう、と。





2人で会うことは、すぐにできた。
だが、いざ言おうと思うと、体が動かない。
恥ずかしさと申し訳なさで、彼女の顔をまともに見ることが出来ない。

でも。
言わなければならない。

覚悟を決めた彼は、それでもうつむきながら、その想いを口にした。
「あの日・・・泣いているあなたを見て、僕は恋に落ちたんです。」

彼女がはっと息を呑んだ気がした。

「僕じゃ・・・ダメですか?僕が・・・僕があなたの涙を癒します!あなたに笑顔を取り戻すのが僕の使命なんだ!」





数秒の沈黙。
彼には、その数秒が永遠にも感じられた。

そして彼は、ゆっくりと顔を上げて、彼女を見た。










彼女、大爆笑。

「違うのよ~」
彼女は笑いながら答えた。




「墓石の上にいたカメムシをじーっと見てたらね、あの臭いが目にしみて大変だったのよ~」







トニー号泣。
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なんか妄想ネタが続いてすいません。
日常ネタを書くと
「今日は会社で9時から23時までお仕事でした。おわり。」
1行で終わります。そんな生活です。死にそう。出社拒否したい。
by kemicho | 2004-08-19 23:14 | 妄想